【幸田文の箪笥の引き出し】
2005年11月17日 読書
ISBN:4101216215 文庫 青木 玉 新潮社 2000/08 ¥580
実家の亡くなった母が衣装道楽だった為、結婚の時、私も分不相応に着物を持たされ、今となっては、箪笥の肥やしとなっている。
着物を愛していた母が聞いたら、さぞ哀しむことだろう。
先日、母の留袖が日の目を見たのだけれど、年代が経っているにもかかわらず、その審美眼には改めて感服させられた。
若き日の母が、父親の月収の何倍もの帯を欲しいとねだった時、魚市場に勤めていた祖父は、黙ってその高価な帯を与えてくれたそうな。
母の美に対する執念は、かなり若い頃から培われたものらしい。
先日、友人が送ってきた本の中に、この本が紛れていた。
作者の青木玉さんは、幸田露伴の孫で幸田文さんのお嬢さん。
エッセイと言うべきこの本の中で、ありし日の幸田文さんが生き生きと息づいておられた。
昔、高校生の時に、幸田文さんの講演を聞く機会があった。
まじかで見る幸田文さんは、小気味良いほどの【江戸弁】を駆使し、父である露伴の話を語ってくれた。
あの時の感激と興奮は、今でも覚えている。
この本を読んでいる(見る)と、あの幸田文さんが現れてくるようで、思わず、周りを見回してしまうほどだ。
この本は、青木玉さんの祖父・母に捧げた愛情有る一編である。
講演時の幸田文さんは、着物の繕いなどの東海道五十三継ぎの話をして、(父・露伴はかなりのしまり屋さんである模様)笑わせてくれたものだが、この本の中の文さんも、母親の知恵を随所に感じさせてくれる。
玉さんの結婚に際し、花嫁衣裳を選ぶ段にも、いかにも合理的、愛情有る選び方で感心させられた、『赤姫』。
親族が着る黒の留袖をあえて、紫に仕立てさせた理由に、母の愛情がこぼれる。
肥やしの効き過ぎた菜の花模様の黒の留袖の顛末を書いた、『すがれの菜の花』は、ユーモアと涙の入り混じった作。
文さんの口は悪いが、相手を思いやる暖かさが滲み出ている。
あじさいの花の前で、あの土門拳さんに撮って貰った写真が素敵な、『あじさいの庭』。
後年、あえて、無地、格子、縞、と手堅くすっきり着こなしていた文さん。あれほど上手に着物を着ていた人が、花模様が似合わないはずが無いのだが、余り無かったという、『花模様』。
全編、21の小品はどれも素晴らしく、解説入りの着物の写真も、年代を感じさせずに、センスよく組み合わされている。
幸田文さんに亡き母の面影をダブらせながら、
「勿体無いね〜! 活かしておやりよ〜」と、向島生まれの向島育ちの文さんの気風のいい啖呵が聞こえてくるような・・・。
妙に、しんみり頁を繰っている。
実家の亡くなった母が衣装道楽だった為、結婚の時、私も分不相応に着物を持たされ、今となっては、箪笥の肥やしとなっている。
着物を愛していた母が聞いたら、さぞ哀しむことだろう。
先日、母の留袖が日の目を見たのだけれど、年代が経っているにもかかわらず、その審美眼には改めて感服させられた。
若き日の母が、父親の月収の何倍もの帯を欲しいとねだった時、魚市場に勤めていた祖父は、黙ってその高価な帯を与えてくれたそうな。
母の美に対する執念は、かなり若い頃から培われたものらしい。
先日、友人が送ってきた本の中に、この本が紛れていた。
作者の青木玉さんは、幸田露伴の孫で幸田文さんのお嬢さん。
エッセイと言うべきこの本の中で、ありし日の幸田文さんが生き生きと息づいておられた。
昔、高校生の時に、幸田文さんの講演を聞く機会があった。
まじかで見る幸田文さんは、小気味良いほどの【江戸弁】を駆使し、父である露伴の話を語ってくれた。
あの時の感激と興奮は、今でも覚えている。
この本を読んでいる(見る)と、あの幸田文さんが現れてくるようで、思わず、周りを見回してしまうほどだ。
この本は、青木玉さんの祖父・母に捧げた愛情有る一編である。
講演時の幸田文さんは、着物の繕いなどの東海道五十三継ぎの話をして、(父・露伴はかなりのしまり屋さんである模様)笑わせてくれたものだが、この本の中の文さんも、母親の知恵を随所に感じさせてくれる。
玉さんの結婚に際し、花嫁衣裳を選ぶ段にも、いかにも合理的、愛情有る選び方で感心させられた、『赤姫』。
親族が着る黒の留袖をあえて、紫に仕立てさせた理由に、母の愛情がこぼれる。
肥やしの効き過ぎた菜の花模様の黒の留袖の顛末を書いた、『すがれの菜の花』は、ユーモアと涙の入り混じった作。
文さんの口は悪いが、相手を思いやる暖かさが滲み出ている。
あじさいの花の前で、あの土門拳さんに撮って貰った写真が素敵な、『あじさいの庭』。
後年、あえて、無地、格子、縞、と手堅くすっきり着こなしていた文さん。あれほど上手に着物を着ていた人が、花模様が似合わないはずが無いのだが、余り無かったという、『花模様』。
全編、21の小品はどれも素晴らしく、解説入りの着物の写真も、年代を感じさせずに、センスよく組み合わされている。
幸田文さんに亡き母の面影をダブらせながら、
「勿体無いね〜! 活かしておやりよ〜」と、向島生まれの向島育ちの文さんの気風のいい啖呵が聞こえてくるような・・・。
妙に、しんみり頁を繰っている。
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