我が家の隣に、或る一家が越してこられた。
近所でも、「白亜御殿」と名づけられたその家は、2年近くも買い手が見つからず、隣家の我が家にしても、無用心この上も無く、憂慮していた。

 半年前から、綺麗にリニューアルされ、庭木も整えられ、越してきた住人は、すこぶる感じの良い一家だった。
久し振りに、明りの灯った家を眺めるのは、実に良いものだ。

 毎朝、黒塗りの外車が、ご主人を迎えにやってくる。
降りてきた運転手さんは、これまた、感じの良い人で、近隣への挨拶も淀みない。
奥様に至っては、実に気さくでよい方だ。
「回覧板」や「ゴミ当番」が次番手という我が家にしてみれば、お付き合いし易く、多いに助かっている。

 ある日のこと、主人は帰宅するや否や、興奮した面持ちで新聞を私に見せた。
何と、お隣のご主人が写真つきで記事に載っているではないか。
日本でも有数の商社の社長さんだという。

「子会社の社長さんでしょう〜?」
「いいや、本社の社長だって・・・」
「嘘! そんなに大きな会社の社長さん〜?」

 犬を連れて散歩に出かけるご主人は、どう見ても、普通の小父さんだ。
野菜の高騰を嘆いている奥さんは、私と同じ、一介の主婦だ。
回覧板を廻しに来る、高校生のお嬢さんは、ごくごく普通の娘さんだ。
どう、見ても、日本を動かしている、大手商社の社長さんには見えない。
 
 もっとも、毎朝の黒塗りの自動車の中の顔は公人の顔で、きりりと見える。(笑)
昨今の、「オネダリ奥様」や「虎の威を借りた奥様」に慣れっこになっていたから、清々しい隣人を誇らしく思った。

「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」

 こんな句が浮かんだけど、誰の句だったろうか・・・。

コメント

meiki
meiki
2008年3月27日16:35

アミさん、こんにちは
さすがに人は見かけによらぬものですね

こういう優しいご近所さんが出来て
本当によいことですね^^

アミ
アミ
2008年3月27日20:07

近隣のトラブルは辛いですものね〜。
よき隣人にめぐり合えたこと、ラッキーです。

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