「お~い! なんか、出てきたぞ!」

と、雛飾りを仕舞っていた主人が私に、四角い紙包みを見せた。
箱の下のほうから出てきたらしい。
和紙に包まれた、3×7㎝くらいの長方形の紙包みだ。
丁寧に畳まれたそれは変色していて、初めて日の目を見たようだった。

「なんだろう・・・」

明けてみると、中には、姉様人形が入れられていた。
紫の矢絣の千代紙の着物を着た姉様人形が・・・。
じっと、見ているうちに、今は亡き母との会話がフラッシュバックしてきた。

「貴女と○子(妹)の間に、もう一人生まれるはずだったのだけれど・・・」

と、寂しそうに話してくれた母の言葉が。
父の仕事(商売)が軌道に乗り始めたその頃、母は忙しく、無理を重ねたようだ。
小さな小さな、名前も付けてもらえなかった娘に、両親が人形を折って紙に包み、雛人形の箱の片隅に仕舞って置いたものだろう。

ゴメンネ!
長いこと、気づかずにいて・・・。
几帳面な父らしい、畳紙の折り方。
器用な母の折った千代紙の姉様人形。
若き両親の、精一杯の愛情の現われだったのだろう。
私は、胸にせまってくるものがあって、何も言えず、ただ、その人形を見ていた。

「じいちゃん、ばあちゃんの位牌の傍に置いてやれよ!」

との主人の言葉で、はっと我に戻った。

夜、床の中で、泣いた。
涙が次から次へと溢れてきた。
両親の愛情を思うと・・・。

私は、二人の息子たちに、両親ほどの愛情を注いで来ただろうか。
注いでいるだろうか・・・。

コメント

piero
2012年3月5日7:43

おはようございます
朝から身につまされるお話ありがとうございます
”わが子への愛とか思い”戦後の何にも無い時代と違う!と言われればそれまでですが昔の親は偉大でしたね
我親業、反省います

マサムネ
2012年3月5日7:54

アミさんは息子さんをちゃんと育てていると思いますよ。

亡くなられた妹さんもきっとそういうのをそばで見られていると思います。

大丈夫ですから自信をもって胸を張って生きてください。

アミ
2012年3月5日8:19

pieroさん!

両親(大正生まれ)の愛情の深さに、今頃になって感激しています。(笑)
私の父母だけでなく、その時代の人は、皆、頑張りましたね~。
だから、目覚しい復興も遂げられたのでしょう。
国中が一丸となった時代だったのですね~。
なんか、涙腺が緩んできました・・・。 アハハ・・・♪(笑)

アミ
2012年3月5日8:21

マサムネさん!

顔も名前も知らない、小さな妹。
見守ってくれてるでしょうか・・・。
息子たちも、いつか、母の思いを感じる時が来るでしょうか・・・。

有難う! 優しい言葉に救われます。

ミハーハハ
2012年3月5日11:53

思わず涙がこぼれました。この世に生れ出ることのできなかった妹さんも、ご両親の愛情をたくさんたくさん貰っていたのですね。親の愛は不思議なもので、かれることがありません。そして異性への愛と違って、何人ものたくさんの子へ与えることができるのですね。

アミ
2012年3月5日13:12

ミハーハハさん!

母の悲しみ、いかばかりだった事でしょう・・・。
お雛様の箱には、父の書体で、細かく記されていますのに、その包みだけは何も書かれず、ひっそり仕舞ってありました。
だから、長いこと、気づかずに居たのです。
今年、気がついて良かった♪
父も、母も、喜んでくれるでしょうね~。 きっと。

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